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奥野利雄『ロマンの人・徐福』

先日、新宮の徐福公園を訪れた際、公園内の売店で購入した一冊。

20170122

自費出版のようですが、場所柄の力なのか、平成3年に初版刊行から第4版も版を重ねているベストセラー的な本。

きっと私みたいな伝説好きな人が買っていくんでしょうね。

本の奥付け、略歴をみると、著者の奥野氏は元新宮市立民族資料館館長、財団法人新宮徐福協会理事でもあった方。

生まれは新宮ではありませんが、ある意味地元の人。

そしてこの新宮市には秦の方士徐福の墓と伝えられる遺構があります。

その一つが徐福公園です。

この本は、徐福伝説のある地で地元の方が書かれた徐福本です。

この手の本の多くは、狂信的かつ絶対存在論的な内容が多いですが、この本が意外に現時点で判っていることを淡々と書き綴っています。

徐福存在論寄り、徐福渡来説寄りですが、謙虚な書き方で読んでいても嫌味を感じず、好感が持てます。

さて、本書の章構成ですが、以下の通りです。

  • 徐福さん
  • 第一章 徐福の生いたち
  • 第二章 徐福のふる里
  • 第三章 徐福の東渡について
  • 第四章 渡海後の徐福
  • 第五章 資料
  • むすび

一章はそのまま徐福の生い立ち、二章では中国の徐福村の話、三章では徐福の渡海計画についてと中国での徐福祭典について、四章では、紀伊半島・新宮だけでなく、九州、四国、東海。伊豆七島、日本海沿岸の徐福伝説について、五章では著者の作成した徐福の年表、日本各地の伝承地、参考資料が書かれています。

これからも判るようにこの本はどちらかというと研究本というよりもデータ本の意味合いのほうが強い気がします。

もう少し突っ込んだ内容でもよかった気がします。

その点が、唯一の物足りなさですね。

個人的に本書での印象深い記述は、文中で紹介されている徐福公園にある「秦徐福碑」の若林芳樹氏による意訳です。

これらの話はそれぞれ違っているが、外国人が来朝したという点だけは一致している。

単に伝説として一笑するか、真摯に事実と受け止めるか、それは今の時点では読み手しだいです。

でも将来、伝説が事実であるという証拠が見つかるかもしれません。

それは結びで奥野氏が書いていることと私も同意見です。

近い未来、そんな日が来ることが楽しみです。

もし、新宮市の徐福公園を訪れたとき、その他どこかでこの本を見かける機会がありましたら、是非手にとってみて、多い国から日本にやってきた徐福に思いをはせてください。

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