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『全国女性街ガイド』考 その二

 この渡辺寛氏と『全国女性街ガイド』、私の古書仲間(古書業界者でない)で一つの議論が持ち上がっています。それは渡辺氏本人の綿密なる実地取材基づいて『女性街ガイド』を書いたのではないのではないか、という議論です。つまり渡辺氏が全国を実際に取材にあるいて上で執筆したように思われるが、各地に協力者がいてその人が取材したデータを元にした可能性があると言う事。ある意味編著者という方が正しいのではないかということです。
 それはまったく根拠のないものではありません。例えばこれは『旅行の手帖』の記述になりますが、「千林」と言う地名、本来の読みは「せんばやし」なのですが「せんりん」とルビを振っています。これは『女性街ガイド』ではルビは振られていません。『ガイド』の方でも「瓦町」を「互町」、「耶馬渓」を「耶渓馬」「天草」を「平草」、「三本松」を「三十松」という風な間違いを見ることが出来ます。ただそれ以外でも非常に誤植と思しく個所が多い(新○社の「ゲー○スト」並)ので字面で間違えた可能性はあります。ですが、取材を委託した人間が存在し、その人が書いた原稿を転記する際に間違えた可能性もまったく否定することが出来ません。
 実は最近、渡辺氏本人が『全国女性街ガイド』を執筆する時に基幹資料としたと思しきある本を目にする機会がありました。それは旅行案内本ですが、赤線に関する個所に青で線を引き、余白にいろいろと書き込んだものでした。
 『全国女性街ガイド』の特色としてその街に勤めている夜の女性達の人数が細かく書かれていますが、実は正確な数字ではないようです。基幹資料と思しき本には、数字や計算式もかかれており、それを見る限り、どうやら赤線のある一軒に在籍する女性の数に赤線業者の軒数を掛けた近似計算によってはじき出した近似値のようです。
 渡辺氏の消息が不明な今となっては、真相はまったく判りません。実際に取材で全国を廻っていない可能性、実際は不正確な数字、それらは現時点ではあくまで推測です。そんな疑惑がありますが、『全国女性街ガイド』が出版されてから以降、これに匹敵するような本が見当たらないのも事実であり、その点においては非常に貴重な本であるということは間違いないと思います。

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